「和食」はなぜユネスコ無形文化遺産になったのか

2013年、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。登録されたのは特定の料理ではなく、食をめぐる「社会的慣習」です。その4つの特徴と背景を解説します。

ご飯、味噌汁、焼き鮭、小鉢が並ぶ和定食
写真:MissionControl(CC BY-SA 2.0)/Flickr
目次
  1. 無形文化遺産とは
  2. 和食の4つの特徴
  3. 「一汁三菜」という食事の形
  4. 登録の背景にあった危機感
  5. まとめ

2013年12月、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。寿司や天ぷらといった特定の料理が登録されたと思われがちですが、実際に評価されたのは料理そのものではなく、自然を尊重する日本人の気質に基づいた「食に関する社会的慣習」です。

無形文化遺産とは

ユネスコの無形文化遺産は、芸能、祭礼、伝統工芸の技術など、形のない文化を保護するための制度です。食に関するものとしては、和食より前に「フランスの美食術」「地中海料理」「メキシコの伝統料理」などが登録されています。同じ2013年には、韓国の「キムジャン(キムチの漬け込みと分かち合い)」も登録されました。

和食の4つの特徴

農林水産省は、無形文化遺産に登録された和食の特徴として、次の4つを挙げています。

1. 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重

南北に長く、海、山、里と変化に富んだ自然が広がる日本では、各地で地域に根ざした多様な食材が使われてきました。素材の味わいを生かすための調理技術や調理道具も発達しています。

2. 健康的な食生活を支える栄養バランス

一汁三菜を基本とする食事の形は、栄養のバランスをとりやすいといわれています。また、だしの「うま味」を上手に使うことで、動物性の油脂が少ない食生活につながっています。

3. 自然の美しさや季節の移ろいの表現

食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴の一つです。季節の花や葉で料理を飾ったり、季節に合った器や調度品を使ったりして、季節感を楽しみます。

4. 正月などの年中行事との密接な関わり

日本の食文化は、年中行事と深く関わりながら育まれてきました。自然の恵みである食を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきたのです。正月料理の由来については「おせち料理の由来」で紹介しています。

「一汁三菜」という食事の形

和食の基本的な献立とされるのが「一汁三菜」です。ご飯を主食に、汁物を一品、おかず(菜)を三品組み合わせます。三品のおかずは、主菜一品と副菜二品で構成されるのが一般的です。

  • ご飯:主食
  • 汁物:味噌汁やすまし汁
  • 主菜:魚や肉、豆腐などを使ったおかず
  • 副菜:野菜、海藻、きのこなどを使ったおかず(二品)
  • 香の物:漬物(「三菜」には数えないことが多い)

主食・主菜・副菜をそろえるこの組み合わせは、自然と栄養のバランスがとりやすい形になっています。

登録の背景にあった危機感

無形文化遺産への登録を目指した背景には、和食文化が失われつつあるという危機感もありました。食の多様化や外食・中食の増加、家庭で料理を作る機会の減少などによって、郷土料理や家庭の行事食が受け継がれにくくなっていることが指摘されています。

登録は「和食を守った」というゴールではなく、次の世代へ受け継いでいくためのスタートといえます。11月24日は「和食の日」とされ、和食文化について考えるきっかけづくりの取り組みも行われています。

まとめ

  • 2013年に登録されたのは、特定の料理ではなく食に関する「社会的慣習」
  • 特徴は「食材の尊重」「栄養バランス」「季節の表現」「年中行事との関わり」の4つ
  • 一汁三菜は、主食・汁物・主菜・副菜を組み合わせた和食の基本の形
  • 登録の背景には、家庭や地域の食文化が受け継がれにくくなっている危機感があった

特別な料理だけが和食なのではありません。季節の食材を選び、家族で行事の料理を囲む日々の食卓そのものが、受け継いでいくべき文化なのです。

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